特任教員部門
研究室名
粟野博之特任教授研究室   
研究室スタッフ
研究室タイトル
ナノ構造スピン制御による新機能材料創成
研究室概略
ナノメ ータサイズのスピン材料では電子のスピン制御が可能となり、新機能デバイスの出現が期待される。本研究室では、スピンメタマテリアルの開拓により超省電力型ペタバイト級(光・磁気)メモリを開発し、地球湿暖化や工ネルギー問題への貢献を目指す。
主な研究テーマ
・センチュリーアーカイブ可能なペタバイト積層型スピンメモリ創成
・スピントルク応用磁壁駆動型スピンロジック創成
・スピン発霞および磁気熱電発電(異常ネルンスト効果、スピンゼーベック効果)の研究
・機械学習を利用した磁気パラメータ推定
個別研究テーマ
  • ナノインプリント磁性細線を利用した省電力全固体磁気メモリ&ロジックの研究

    粟野 博之

    2010年度 - 現在

     詳細

    省電力が期待される磁性細線メモリはSiエッチングで作られているため、仮に研究に成功してもハイエンドメモリにしかならず省電力貢献は小さい。しかし、光ディスク同様の安価な成型プロセスで磁性細線が作れるならば低コストでハイパフォーマンスなユニバーサルメモリに展開できる可能性がある。しかも磁壁駆動には平滑構造細線が必要であり本プロセスで作成が可能である。ナノメータサイズのエッチング磁性細線では作成が困難であり、そのため磁壁駆動に必要な電流密度低減が難しいと考える。そこで、光ディスク同様の溝形状にスパッタ膜を製膜し、磁壁の電流駆動を試みた結果、電流密度は6×109A/m2にまで低減した。今後、溝形状の最適化を行い、さらなる低電流密度化に挑戦する。

    成果:

    2024年度
    ポリカーカーボネイトプラスチック薄型基板にナノインプリントで電極付き磁性細線パターンを作り、GdFeCoとPtをスパッタ製膜することで磁性細線を作製した。パターンは通常のメモリ検討用I型に加えてロジック検討用のY字型も加えてある。一方、Si基板上に作成したGdFeCo/Pt磁性細線の両エッジをレーザーアニールすることで磁壁移動の安定性を大幅に改善することができた。この効果を今後プラスチックナノインプリント磁性細線でも有効かどうか検討する。

    2023年度
    磁性細線に磁壁を導入し、外部磁界を印加すると大きな起電力が生ずる原因を調べる必要がある。ファラデーの法則の影響を調べるために、磁性細線の飽和磁化と起電力の関係を測定した。その結果、飽和磁化が小さくなるほど起電力が増加した。これはファラデーの法則と逆の結果であることがわかった。

    2022年度
    ポリカーボネイトプラスチックナノインプリイント基板を作成し、その上に希土類・遷移金属合金または多層膜をスパッタ製膜するだけで、再現性ある磁性細線を容易に作成できることを見出した。磁壁駆動に必要な電流密度も高価なSi基板に半導体プロセスで作った磁性細線に比べて一桁小さい。超安価で超省電力なスピントロニクスデバイスに活用できる。

  • 3次元磁気記録および磁気光学ニューラルネットワークの基礎検討

    粟野 博之

    2010年度 - 現在

     詳細

    ビットパターン媒体表面に温度勾配で記録磁区パターンが移動可能な磁性膜を形成し、熱アシスト磁気記録用ヘッドでパターン磁化された部分を加熱すると、温度勾配でビットパターン奥に記録された磁区が表面に移動する。これをTMRヘッドで再生できると3次元磁気記録が可能になる。この提案を検証するための記録媒体の基礎検討を行っている。

    成果:

    2024年度
    磁気光学ニューラルネットワークの計算を見直した結果、MNIST手書き文字認識率が94%にまで改善した。原理が確認できた。今は、ガーネットへの光磁気記録であるが、これにはかなり時間がかかる。そこで、当初目的の磁性細線での高速データ書き換えを検討している。磁壁の移動速度を2500m/secにまで改善できたので、現在1ビット1ミクロンなので書き換え時間は0.4nsec、1000x1000マトリクスの1ライン1000ビットの書き換え時間は40nsecと高速であり、今後はこの磁性細線にパターンを書いてのMNISTの手書き文字識別率を検討する。

    2023年度
    隠れ層であるガーネット磁性膜に磁気パターンをレーザーで光磁気記録し、2枚の隠れ層でのMNIST手書き文字識別を行った。その結果認識率2割でこの原理が有効であることが分かった。今後は、隠れ層の記録パターン最適化、隠れ層を増やす等で更に識別率向上を目指す。

    2022年度
    ポリカーボネイトナノインプリント基板に磁性細線パターンを形成し、これを複数枚重ねて3次元記録ができる。100層の場合、2.5インチSSDサイズに100TBくらいのデータ記録が期待できる。また、1層1層に任意の磁気パターンをニューロンとして形成できる。基板は透明であり、磁性層も数nmと薄くできるので円偏光または直線偏光を照射すると、出射光側に磁気光学パターンが出現する。これを用いたニューラルネットワークの研究を開始した。