電子情報分野
研究室名
制御システム研究室   
研究室スタッフ
研究室タイトル
複雑な動的システムを高度に制御、最先端システム制御理論の開発
研究室概略
産業のあらゆる分野で多用される制御理論について、新しい先端的な理論を研究・開発するとともに、宇宙や産業で働くロボットの運動制御、福祉のための人とロボットの協調制御などに応用し、実社会に役立つ高度な制御を実現することを目指している。
主な研究テーマ
・数値最適化による非線形システムの制御系設計
・スマートグリットの制御
・ロバスト制御理論(BMIアプローチによる統合化制御系設計法)
・ヒューマンサポートシステムのための制御理論
個別研究テーマ
  • マルチエージェント制御理論による電力ネットワークの高効率分散制御

    川西 通裕

    2017年度 - 現在

     詳細

    拡張ラグランジュ乗数法の一種であり,解析的な凸最適化アルゴリズムとして知られているADMM(Alternative Direction Multiplier Method)とマルチエージェントシステムの合意制御理論を用いて分散型ADMMアルゴリズムを開発し,スマートメーターなどIoT技術を活用する電力ネットワーク制御へ応用して以下の(1)~(3)について高効率な分散制御を実現する.
    (1)リアルタイムプライシングとデマンドレスポンス
    ・電力供給者・需要家の利益最大化のため,社会厚生関数(Social Welfare Function)を導入し,利益最大化を達成するリアルタイムプライシングアルゴリズムを開発する.
    ・再生可能エネルギーを入力信号としたデマンドレスポンスによる電力需給最適化を実現する.
    ・分散型ADMMをパワーグリッドのエコノミックディスパッチ問題に応用し,常にエネルギーバランスを満たしつつ,極めて早い収束速度で大域的な最適解を求める.
    (2)熱電併給(CHP:Combined Heat and Power)システムの協調制御
    ・燃料電池は出力電力に対して発電効率が非線形な特性となるため従来のADMM凸最適化手法では厳密に扱うことができないため,本研究では新たに効率マッチングの考え方を導入し,効率マッチングを実現する逐次最適化アルゴリズムを開発することで,非線形な発電効率に対応できる新たな分散型ADMMアルゴリズムを開発する.
    ・実機データから構築した精密なCHPシステムモデルに基づいた協調制御のシミュレーションにより,速やかに収束し高い最適化効率を実現できる分散アルゴリズムを求める.
    (3)V2G(Vehicle to Grid)バーチャルパワープラントとマイクログリッドの統合制御
    ・EVの充放電スケジューリングを行うKemptonアルゴリズムと,マルチエージェント制御理論による合意制御,分散制御に適した凸最適化アルゴリズムであるADMM手法を統合し,EVの蓄電池をバーチャルパワープラントとして活用することでマイクログリッドの最適なオペレーションを実現するアルゴリズムを開発する.

    成果:

    2022年度
    蓄電池群の充放電制御,および電力ネットワークの負荷周波数制御において,時変な通信遅延と受動性を考慮した新たなマルチエージェント制御理論を提案し,電力ネットワーク制御へ応用することで次の2つの成果を得た.

    (1)時変な通信遅延を考慮した蓄電池群の充放電制御
    (2)受動性を用いた電力ネットワークの負荷周波数制御

    成果(1)は,非対称・非一様・時変な通信遅延に対する合意制御法と安定解析の理論を提案した昨年度の研究成果を,蓄電池群の充放電制御に応用し,新たに売買電力制約に対する誤差の評価手法の提案を行うことで,蓄電池群のロバストな充放電制御を実現した.また成果(2)は,これまで我々の研究グループが研究をしてきた受動性に基づくマルチエージェントシステムのエネルギー最適化手法を,電力ネットワークの負荷周波数制御に応用して,電力ネットワークの負荷周波数制御における制御系設計の負荷を削減して安定性を保証するための制御理論を開発し,具体的な実装方法を提案した.

  • IoT通信ネットワークにおける不確かさ(時間遅れ,飽和)を考慮したロバスト制御

    川西 通裕

    2017年度 - 現在

     詳細

    IoT通信ネットワークを活用して電力ネットワーク,無線センサネットワーク,交通網の制御を行う際,局所的なエージェント間の協調行動によって,大域的な目標を達成できるか否かを検証するコンセンサス制御問題が重要となる.本研究では,IoT通信ネットワークにおいて時間遅れや飽和などの不確かさが存在する制約付きコンセンサス問題を,グラフ構造のエッジダイナミクスを用いて冗長性のない低次元なマルチエージェントシステムへと変換し,これを静的な非線形要素を含むルーリエ・システムのネットワークとして表現する手法等を開発してリアプノフ関数を構築し,従来は出来なかった大域的に指数オーダーの収束性を達成するロバストなコンセンサス制御を実現する.

    成果:

    2022年度
    通信ネットワークにおける時変な遅延によって制御システムが不安定化する問題に対して、送信したパケットの遅延時間を計測し送信元のエージェントに伝達する通信プロトコルに基づいて、ロジックによるパケット選択と同期を用いて高速な合意を実現する制御方法を開発し、線形行列不等式による保守性の少ない安定条件を導出した。

  • 非線形制御理論とその応用

    川西 通裕

    2017年度 - 現在

     詳細

    受動性、絶対安定性、非ホロノミックシステムや連続・離散事象混合システムなどの制御系設計理論とその応用研究を行っている.

    成果:

    2019年度
    非ホロノミック拘束とホロノミック拘束が混在するシステムの適応制御系設計理論の研究を行い,
    (1)電気自動車
    (2)ドローン
    (3)モバイルマニピュレータの位置と力のハイブリッド制御
    (4)柔軟アームを有する平面宇宙ロボットの適応制御
    へ応用した.

  • パワーアシストシステムの研究(Research on Power Assist Systems)[大学間連携等による共同研究]

    成清 辰生(転出・退職), 川西 通裕

    2017年度 - 現在

     詳細

    歩行アシスト装置を使用するリハビリテーションの効率を上げるために,人の発揮力と動作意図を推定して,必要最小限の力をアシストするAAN(Assist as Needed)制御の手法を提案した.シャローなニューラルネットワークを繰り返しアルゴリズムにより学習することで未知パラメータを動的に推定し,また射影関数を用いて構成するリアプノフ関数により制御システムの大域的な安定性を維持する制御理論を導出し,実機実験によりAAAN制御の有効性を証明した.