電子情報分野
研究室名
半導体研究室   
研究室タイトル
次世代のクリーンなエネルギーを担う、高効率太陽電池および材料の研究
研究室概略
太陽光発電は21世紀を担うクリーンな新エネルギー源の中核に位置付けられる。極限効率を目指した超高効率多接合構造太陽電池、結晶シリコン太陽電池、集光型太陽電池や太陽電池用新素材など、各種半導体材料・デバイスついての研究を行っている。
主な研究テーマ
・太陽電池の用途拡大・長期信頼性向上の研究
・高効率結晶シリコン太陽電池および基板結晶の研究
・超高効率・低コスト化合物太陽電池・材料の研究
・次世代先端半導体素子を実現するための要素技術の研究
・新な原理に基づく次世代高効率太陽電池の研究
個別研究テーマ
  • 超高効率・低コスト化合物太陽電池・材料の研究

    小島 信晃, 大下 祥雄

    1994年度 - 2024年度

     詳細

    III-V族化合物半導体は、多様な材料で任意のバンド・プロファイルを持つ多接合構造太陽電池を構成することで、40%以上の超高効率光電変換が可能である。低コスト化を実現するため、Si基板上III-V族化合物エピタキシャル成膜、および成膜層のリフトオフに関する研究を行っている。さらに、変換効率50%以上が期待できる4接合用新材料として、InGaAsN材料の高品質成膜と物性・欠陥評価に関する研究を行っている。

    成果:

    2024年度
    GaAs(001)基板上に成膜したGaSe層状化合物の配向特性から、基板の表面ステップ構造とGaSe配向の関係を明らかにした。前年に引き続き、GaSe層状化合物上に成長したGaAsエピタキシャル膜のX線結晶解析を進め、各結晶方位に対するGaAs膜の残留歪みを明らかにした。

    2023年度
    層状半導体上に成長したGaAsエピタキシャル膜のX線結晶解析を行い、GaAs膜の高品質化のための課題を明らかにした。Si基板上GaAs成膜時のその場X線逆格子マップから、歪み緩和過程と欠陥形成について解析を進めた。

    2022年度
    層状半導体を中間層に用いたIII-V族化合物の成長とリフトオフを達成している。アンドープInGaAsNにおいてアクセプタとドナーの起源となるN-H複合欠陥の解析を進めている。

  • 太陽電池の用途拡大・長期信頼性向上の研究

    大下 祥雄, 山口 真史, 小島 信晃

    2020年度 - 現在

     詳細

    太陽光発電が主要エネルギーを担う社会の実現のためには、建物の壁面や移動体(無人航空機、自動車など)といった、様々な場所に太陽電池を設置し、太陽電池の用途を拡大していく必要がある。本研究では、太陽光エネルギーのみで走行可能な自動車実現に必要な、高効率(35%以上)かつ低コスト(200円/W)な太陽光発電モジュールの実現を目指す。高効率の実現のため、これまでに本学で研究開発を進めてきた低コスト結晶シリコン太陽電池と高効率化合物半導体太陽電池を組み合わせたモジュールを開発する。自動車に搭載する太陽電池では太陽光の入射方向が時々刻々変化する。このような自動車搭載用モジュールに特有の課題の解決を目指す。さらに、メガソーラー等の大規模太陽光発電設備における太陽電池の劣化メカニズムの解明等、長期信頼性向上に関する研究を行っている。

    成果:

    2024年度
    ボトムセル⽤シリコン太陽電池とInGaP/GaAs2接合セルと合わせたタンデム太陽電池の研究をシャープらと共同で進め、ボトム結晶シリコン太陽電池効率として6%、モジュール効率として33.6%(世界最高効率)を得た。車載用モジュール用に関して、部分日陰に強い新たなストリング構造を提案した。加えて、⾞載⽤太陽電池モジュールの実証⾛⾏データから、太陽電池搭載⾃動⾞の電⼒損失に関する解析を継続的に進め、車載用モジュールの課題を明確化した。

    2023年度
    ボトムセル用シリコン太陽電池とInGaP/GaAs2接合セルと合わせた効率として、35.8%を達成した。
    車載用太陽電池モジュールの実証走行データから、太陽電池搭載自動車の電力損失に関する解析を進めた。

    2022年度
    ボトムセル用シリコン太陽電池を試作し、InGaP/GaAs2接合セルフィルター下での効率5.58%を得た。III-Vセルと合わせた効率は34.1%を達成した。
    車載用太陽電池モジュールの実証走行データの評価解析を行っている。

  • 高効率結晶シリコン太陽電池および基板結晶の研究

    大下 祥雄, YADAV Subhash Chand, PALANISAMY Baskaran

    1994年度 - 現在

     詳細

    太陽電池の更なる普及を進めるためには、現在の結晶Si太陽電池の更なる⾼品質化が極めて重要であり、そのための新しい基盤技術の開発を⾏っている。また、従来のpn接合を⽤いない新規⾼効率太陽電池であるキャリア選択型太陽電池に関して、デバイス構造、シリコン結晶、電極材料、パッシベーション材料に関する研究を進めている。さらには、研究成果を応用して、シリコン太陽電池を下部セル、ペロブスカイト太陽電池として用いた高効率・低コストタンデム太陽電池の研究を進めている。

    成果:

    2024年度
    半導体と絶縁膜界⾯および界⾯近傍の半導体中に存在する結晶⽋陥の濃度・捕獲断⾯積・エネルギー準位に加え再結合特性を定量的に得られる新たな⽋陥特性評価⽅法を用いて、結晶シリコン中の炭素原子や酸素原子がプロセス、特にプラズマプロセス時に形成される結晶欠陥の形成に与える影響を明らかにしてきた。

    2023年度
    キャリア選択型太陽電池の高効率化を目的に、半導体と絶縁膜界面および界面近傍の半導体中に存在する結晶欠陥の濃度・捕獲断面積・エネルギー準位に加え再結合特性を定量的に得られる新たな欠陥特性評価方法を確立した。一方、本太陽電池とペロブスカイト太陽電池とを積層した次世代高効率太陽電池に関して、ボトムセルに適した太陽電池構造の研究を進めてきた。

    2022年度
    多結晶Si中の粒界特性と熱処理前後の金属不純物分布・電気特性の関係をEBIC測定結果をもとに検討し、粒界構造とそこでの少数キャリアの再結合速度、さらにはそれらに与える熱処理温度の関係が明らかになってきている。
    キャリア選択型太陽電池におけるプロセス誘起欠陥の評価解析を進めている。

  • 新な原理に基づく次世代高効率太陽電池の研究

    大下 祥雄, PALANISAMY Baskaran

    2000年度 - 現在

     詳細

    一つの材料を用いて作製した太陽電池の変換効率の理論限界は30%程度である。この限界を超える方法にダウンコンバージョンと量子カットがある。ダウンコンバージョンとは短波長から長波長の光(フォトン)を生成する技術である。一方、量子カットは、大きなエネルギーを持つ紫外領域の一つのフォトンから、太陽電池材料が吸収可能な長波長領域のフォトンを二つ生成する方法である。現在、Ybなどをドーピングした量子構造ペロブスカイトにより、効率的な量子カットの実現をめざしている。

    成果:

    2024年度
    量子構造ペロブスカイトを用いることにより、従来の結晶シリコン太陽電池の変換効率が向上する結果を得た。

    2023年度
    量子構造ペロブスカイトにMnをドーピングすることにより、比較的高効率でダウンコンバージョンが実現できることを示した。

  • 次世代先端半導体素子を実現するための要素技術の研究

    大下 祥雄

    2000年度 - 現在

     詳細

    高性能な先端半導体素子を実現するには、新たな構造や新規材料を用いることが必要不可欠である。本研究室では、化学気相成長法によりそれら新規材料を堆積するための新たな有機金属原料の開発を進めている。加えて、半導体中の欠陥に捕獲された電子のスピンを利用した新たな量子デバイスの研究を進めている。

    成果:

    2024年度
    SnO2堆積用の新たな原料を開発し、その特性の評価を進めてきた。加えて、スピンを利用した量子センサー実現のためSiCを基板としたMOSデバイス評価を開始した。

    2023年度
    次世代配線材料の候補の一つであるCoを原子層堆積法により堆積させるための新たなアミジネート系原料を開発し、製膜特性を評価した。従来の原料と比較して良好な堆積結果を得た。

  • 超⾼効率・低コスト化合物太陽電池・材料の研究

    大下 祥雄, 河野 将大, 小島 信晃

    2025年度 - 現在

     詳細

    III-V族化合物半導体は、多様な材料で任意のバンド・プロファイルを持つ多接合構造太陽電池を構成することで、40%以上の超⾼効率光電変換が可能である。変換効率50%以上が期待できる4接合材料として、InGaAsN材料の⾼品質成膜と物性・⽋陥評価に関する研究を行う。

  • SiC MOS構造を用いた量子センサの研究開発

    岩田 直高, VILLAMIN Maria Emma (転出・退職), 沼田 敏典, 大下 祥雄

    2024年度 - 現在

     詳細

    SiCデバイスの故障を検知するセンサの実現を目指して、SiC MOS構造に導入した欠陥を利用した量子センサを開発する。

    成果:

    2024年度
    透明電極/酸化膜/SiC構造を用いてマイクロ波を導入する導波路とバイアス印加のための電極を設けた素子構造の設計と4インチウエハスループロセスの構築を行った。要素プロセスの検討を終え、1次試作を完了した。初期的な評価で動作を確認した。