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熱輸送スペクトル解析および計測技術の開発
志賀 拓麿
2025年度 - 現在
詳細
熱伝導の担い手である格子振動の量子(フォノン)は、ナノ構造制御や界面など微小スケールにおいて、従来の熱拡散描像や粒子描像では説明できない輸送形態を示すことがある。本テーマでは、こうした従来モデルでは捉えられない輸送領域に着目し、フォノン熱輸送特性を解析する新しい技術の開発を進める。さらに、熱計測における特徴的な長さスケールをフォノンの平均自由行程と同程度以下に制限することで、輸送のスペクトル情報を直接取得可能な計測手法を構築し、熱輸送の本質的な理解と新たな熱制御技術の基盤形成を目指す。
成果:
2025年度
本論文では、二次元アモルファスグラフェンを対象に、トポロジカルデータ解析手法であるパーシステントホモロジーを用いることで、熱伝導率を高精度に予測できることを示しました。さらに回帰結果の逆解析により、熱伝導率の低下と強く関係する「局所的な原子配列の特徴」として、歪んだ六角形や三角形に由来する構造が重要であることを特定しました。これらの特徴は低周波の局在振動と対応しており、熱輸送を抑制するという物理的解釈も得られました。2025年度
本論文では、単結晶ダイヤモンド・ナノビームにおける境界でのフォノン反射を、温度を制御パラメータとして変調できる可能性を示しました。室温から約140 Kまでの熱伝導率測定により、熱伝導率は温度低下とともに単調に減少する一方、第一原理計算とボルツマン輸送方程式に基づく「完全拡散境界散乱」モデルからは低温ほど系統的に外れることを確認しました。この乖離を解析した結果、低温域で鏡面的なフォノン—境界散乱の寄与が増大していること、さらにその温度感度がシリコンよりもダイヤモンドで大きいことを示しています。2025年度
本研究では、組成により層状構造(InI)または分子結晶的構造(InI3)をとるインジウムヨウ化物を対象に、第一原理に基づく非調和格子動力学計算によりフォノン熱輸送を体系的に解析しました。粒子的輸送(Peierls-Boltzmannに基づく寄与)と、波動的輸送(バンド間トンネリングに由来する寄与)を比較した結果、いずれの物質も広い温度域で格子熱伝導率が 1 W m-1 K-1 未満に留まることを示しました。さらに、波動的寄与は InI3 では粒子寄与と同程度まで重要になる一方、InI では小さいことを明らかにしました。また、実験で報告されている高圧相 InI3 について、積層欠陥や In サイト占有の不規則性が示唆されている点に着目し、積層順序の異なる複数の秩序化モデルを構築して安定性と熱輸送を評価しました。その結果、積層順序によるエネルギー差・熱伝導率の差はいずれも小さく、面内熱輸送は積層の違いよりも In2I6 層そのものの振動特性に主として支配されることが示唆されました。
研究室名
機械材料物性研究室
研究室スタッフ
研究室タイトル
物性解析と先端計測による輸送現象の理解と制御に関する研究
個別研究テーマ
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熱輸送スペクトル解析および計測技術の開発
志賀 拓麿
2025年度 - 現在