特任教員部門
研究室名
岩田直高特任教授研究室   
研究室タイトル
省エネルギー社会に向けて、高効率動作する低コスト高機能半導体デバイスを開発
研究室概略
生活に不可欠な電子機器を構成する半導体デバイスの省電力化と高機能化に注目が集まっている。窒化ガリウム(GaN)を用いたヘテロ接合構造を中心に新しい機能を有するデバイスの研究や、それらを実現する作製プロセスと超低消費電カシステムヘの応用技術の開発を進めている。
主な研究テーマ
・化合物半導体ヘテロ接合パワーデバイスの研究
・新機能化合物半導体デバイスの研究
・超低消費電力半導体デバイスとシステムの研究
個別研究テーマ
  • 酸化物によるⅢ-Ⅴ族化合物半導体量子構造のパッシベーションと被覆

    神谷 格, Ronel Christian Intal ROCA, 岩田 直高

    2017年度 - 現在

     詳細

    気相・液相法を用い、酸化物によるⅢ-Ⅴ族化合物半導体の量子井戸・量子ドットの表面パッシベーション及び被覆を実現させる。電子的に安定な表面を得ると共に、歪や相互拡散を抑制し、量子構造本来の物性を出現させることを目指す。

    成果:

    2023年度
    原子層堆積法によるAlO膜を用いてInAs表面のパッシベーションや量子ドットの被覆を実現し、発光強度の増加や発光波長シフトの抑制を実現した。

    2022年度
    原子層堆積法による酸化膜を用いて半導体表面のパッシベーションや量子ドットの被覆を実現し、量子ドットの歪や相互拡散に関する知見を得た。

  • 超低消費電力半導体デバイスとシステムの研究

    岩田 直高, VILLAMIN Maria Emma 

    2017年度 - 現在

     詳細

     持続可能な省エネルギー社会の構築に寄与する超低消費電力半導体デバイスとシステムの実現に向けて、化合物半導体ナノ構造やヘテロ構造の研究を基に、それらのデバイスへの適用、さらに回路やシステム化技術との融合を検討している。具体的には、GaN系のヘテロ構造やスーパー接合を用いたパワーデバイスの研究開発を電力制御システム向けに進めている。最近は、エネルギーハーベスティング(環境発電)やワイヤレス電力伝送向けに、低い電圧から高い電圧まで高い効率で整流する高機能デバイスが求められている。これに向けて、p型GaNゲートHEMTの成果を適用して極めて低いオン電圧を示すとともに、スーパー接合の研究から得られつつある高い耐圧特性を兼ね備え、さらに正孔注入による高い電流密度も実現する新しい素子構造のヘテロ接合ダイオードの研究を進めている。今後は、これらの成果の適用により低電圧から高電圧までを高効率で整流するブリッジ回路ICの開発を進める。

    成果:

    2023年度
    p型GaNゲートHEMTの成果を適用したゲーテッドアノードダイオードの研究では、正孔注入による高い電流密度を実現する2段のp型GaNゲート構造を検討した。この新しいゲート構造においてオーミック電極を設けた領域のp型GaNの厚さと長さを変えた検討を行い、低オン抵抗を実現した。高耐圧化に向けては、オーミック電極を設けていない領域のp型GaN層の厚さを変えて高耐圧特性を実現した。これらの成果を組み合わせた研究から、0Vオン電圧を有し、低オン抵抗と高耐圧特性を示すデバイスの実現を目指す。

    2022年度
    p型GaNゲートHEMTの成果を適用したゲーテッドアノードダイオードの研究では、p型GaNゲートの厚さを変えて0Vに近い極めて低いオン電圧を実現した。このダイオードを用いたブリッジ回路ICで、0.2Vまでの交流信号の整流を実現した。高耐圧化に向けては、スーパー接合構造のダイオードにおいて、p型GaN層の厚さを変えてアクセプタ濃度を制御し、残留Siドナーを補償することで1.3 MV/cmの高耐圧化を実現した。さらに正孔注入による高い電流密度も実現する新しい素子構造のヘテロ接合ダイオードの研究を進めており、これらの成果を組み合わせた研究から、0Vオン電圧を有し、低オン抵抗と高耐圧特性を示すデバイスの実現を目指す。

  • 化合物半導体ヘテロ接合パワーデバイスの研究

    岩田 直高, VILLAMIN Maria Emma 

    2017年度 - 現在

     詳細

     Siデバイスの性能を凌駕する安価な半導体デバイスが求められている。これに向けて、高速かつ高効率動作が可能で耐圧特性に勝る化合物半導体デバイス、特に窒化ガリウム(GaN)を用いた電力制御用やミリ波・マイクロ波帯用のパワートランジスタの開発に関連する研究を進めている。具体的には、AlGaN/GaNヘテロ構造を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)や縦型トランジスタに注目している。HEMTの研究では、AlGaN上のGaNを選択的に除去するドライエッチング、接触抵抗の低いオーミック電極と原子層堆積法によるデバイス表面を安定化させる保護膜形成などの作製プロセス技術を開発した。これらの技術を用いて、p型GaNゲートをHEMT上に形成して、ノーマリオフ動作を実現した。次にGaNの物性から期待される素子特性の実現を目指して、GaN基板の上に設けるバッファ層がHEMT特性に及ぼす影響を、素子周囲に設けたサイドゲートからの変調で明らかにした。一方、縦型トランジスタの実現には低抵抗なp型GaN層が必須であり、レーザー照射によりアクセプタ不純物を活性化させる研究を進めている。
     今後は、スーパー接合構造の形成を目指して、低電圧向けには横型のp型GaNゲートHEMTを展開したゲーテッドアノード構造のダイオードを検討し、高電圧動作用にはレーザー照射によるアクセプタ活性化研究の成果を適用して縦型構造デバイスの実現を目指す。

    成果:

    2023年度
     p型GaN/AlGaN/GaN構造を有するゲーテッドアノードダイオードの研究では、p型GaNゲートの厚さと長さを変えた検討を行い、低オン抵抗を実現した。高耐圧化に向けては、スーパー接合構造のダイオードにおいて、p型GaN層の厚さを変えてアクセプタ濃度を制御し、高耐圧特性を実現した。今後は、これまでの成果を組み合わせた研究を進め、制御された0V付近のオン電圧を有し、低オン抵抗と高耐圧特性を示すデバイスの実現を図る。
     一方、縦型のGaNスーパー接合構造形成のために、レーザー照射によるMgの活性化の研究を進めた。まずMgドープGaNを用いて、正孔濃度の強度依存性を明らかにし、熱処理と同等の活性化率を得た。MgとSiを共ドープしたGaN(成長後はn型)では、熱処理によるp型反転を確認した。今後は、Mg濃度へのフィードバックを行い、レーザー照射によるp型反転を図る。

    2022年度
     p型GaN/AlGaN/GaN構造パワーデバイスのオン電圧制御と高耐圧化を図った。ゲーテッドアノードダイオードでは、p型GaNゲートの厚さを変えて低いオン電圧を実現した。高耐圧化に向けては、スーパー接合構造のダイオードにおいて、p型GaN層の厚さを変えてアクセプタ濃度を制御し、残留Siドナーを補償することで1.3 MV/cmの高耐圧化を実現した。これらの成果を組み合わせた研究から、制御されたオン電圧を有し、低オン抵抗と高耐圧特性を示すデバイスの実現が期待される。
     一方、縦型スーパー接合構造形成のために、レーザー照射によるMgの活性化を検討した。MgドープGaNを用いて、正孔濃度の強度依存性を明らかにし、熱処理と同等の活性化率27%を得た。MgとSiを共ドープしたGaNでは、伝導帯とアクセプタとの発光を観察した。さらに、C-V測定で、活性化したMgアクセプタによる電子の補償を確認した。p型反転に向けて、高濃度Mgウエハの検討を進めている。