物質工学分野
研究室名
表面科学研究室   
研究室スタッフ
研究室タイトル
原子レベルで物質表面を構築・評価し新機能ナノ材料を開発
研究室概略
物質表面をナノオーダーで制御・評価し、ナノカーボンなどの新規物質を利用した新しいエネルギー 材料や環境材料の提案とその創製を目指す。具体的には電子・ 光学デバイス開発、燃料電池や太陽電池の電極材料の高性能化、水フィルターなどの環境デバイス開発を進めている。
主な研究テーマ
・カーボンナノ材料の合成と応用
・探針増強ラマン散乱分光法による材料評価
・次世代電池用高性能電極材料の開発
個別研究テーマ
  • プローブ顕微鏡を用いたナノ材料の評価

    吉村 雅満

    2017年度 - 現在

     詳細

    プローブ顕微鏡を用いたカーボン材料のナノ評価を行う。表面の形態観察に加え、ナノ機械特性や電気特性の測定を行う。後者は、電流AFM、ケルビンプローブ顕微鏡、圧電応答顕微鏡を含むが、とくに、昨今、コンダクティブAFMを用いて化学的に形成したグラフェン内の伝導分布を明らかにする。また、ラマン分光法と組み合わせることにより回折限界を超えた光学評価を可能とする、探針増強ラマン分光法(TERS)、特に測定の要となる探針開発を行うことを目的とする。

    成果:

    2023年度
    導電性還元グラフェン酸化物のナノレベルでの摩擦特性について研究した。還元により酸素官能基が減少し、これにより摩擦力が減少することを見出した。

    2022年度
    本研究では、メタンプラズマ処理により還元された導電性還元グラフェン酸化物(rGO)単層膜を数分以内に作製する方法と、導電性原子間力顕微鏡(C-AFM)による局所導電性のナノスケール特性評価を報告し、高透明導電電極への応用を実現する。

  • カーボン材料のナノ加工に関する研究

    吉村 雅満

    2017年度 - 現在

     詳細

    グラフェンは炭素の一原子層であり,電気的,熱的,機械的に優れた性質をもつ。但し、単層グラフェンはゼロギャップ半導体であるため、ギャップを持たせるにはナノリボン化などの加工が必要となる。このための加工方法の探索を目的とする。

    成果:

    2023年度
    グラファイトに遷移金属を蒸着しこれを加熱することにより、ライン状のエッチング痕を作製することに成功した。エッチングの幅は、酸素プラズマで予めグラファイト表面に孔をあけることにより制御できることを見出した。

    2022年度
    グラフェン、グラファイトを試料として、金属粒子の触媒作用を用いた方法、あるいは、オゾン、酸素プラズマ、コロナ放電、スチーム処理などを用いる方法により、表面にナノメートルサイズの欠陥を形成できることを見出した。活性の高い触媒作用や、結晶成長の核形成サイトとして利用可能であり、エネルギー材料としての応用が期待できる。

  • 探針増強ラマン散乱装置の開発

    吉村 雅満

    2023年度 - 現在

     詳細

    ラマン分光法と原子間力顕微鏡を組み合わせることにより、回折限界を超えた空間分解能で光学評価が可能となる。但し、原子間力顕微鏡の探針には金属微粒子を取り付ける必要があり、探針開発技術が極めて重要である。

    成果:

    2023年度
    探針先端に銀、金を独自の方法でコーティングすることにより、再現性の高い増強探針の作製に成功した。

  • In-situ赤外分光法を用いた水電解触媒の反応機構の解析

    原 正則

    2017年度 - 現在

     詳細

    電気化学赤外分光測定用のセルを開発し、市販の赤外分光装置と組み合わせることで、反応中の各電位における電極上の吸着物質や電極材料の変化を直接観察する。

    成果:

    2023年度
    Agナノ粒子を担持したグラファイト電極を用いて、二酸化炭素の電解還元反応に対する特性評価を行った。電気化学AFMによる解析から、二酸化炭素還元反応の副反応である水素発生反応によりグラファイト基板とAg粒子の吸着力が弱まり、電極に担持されたAgナノ粒子の脱離や凝集が起きることが分かった。

    2022年度
    電気化学赤外分光測定セルを作製し、赤外分光装置と組み合わせて全反射型の光学系を用い、電極電位の変化に伴う水電解触媒上での水分子の吸着挙動を計測した。担体材料を変更することで、水分子の吸着挙動が異なることを明らかにした。

  • 二酸化炭素還元反応用Ag微粒子触媒の開発

    原 正則

    2017年度 - 現在

     詳細

    二酸化炭素の還元反応による一酸化炭素の生成反応用のAg微粒子修飾電極触媒の開発に向けて、Ag微粒子のサイズや担体への担持条件による触媒活性および耐久性への影響を解明し、高活性な電極触媒を合成法を確立する

    成果:

    2022年度
    Agナノ粒子を担持したグラファイト電極を用いて、二酸化炭素の電解還元反応に対する特性評価を行った。二酸化炭素還元反応の副反応である水素発生反応により、電極に担持されたAgナノ粒子の脱離や凝集が起きることが分かった。

  • Liイオンキャパシタ用新規CNT複合電極の開発

    原 正則

    2017年度 - 現在

     詳細

    高容量かつ高速な充放電応答性を有するLiイオンキャパシタ(LIC)用電極材料として、垂直配向カーボンナノチューブ(CNT)を基板電極(カーボン、AlもしくはCu)上に直接成長させた新規電極の作製を行い、その電極性能の評価を行う。電極に用いるCNTはアルコール触媒化学気相成長(AC-CVD)法により合成を行う。作製した電極は、水溶液中もしくは有機溶媒中において性能評価を行い、LICの正極および負極への応用を行う。

    成果:

    2022年度
    垂直配向カーボンナノチューブ修飾電極の充放電容量向上のため、CNTの成長向上に向けて多段階合成法を開発した。多段階合成法により、CNTの成長量が3倍程度向上し、それに伴い電極の容量も向上した。

  • 水電解用触媒の開発

    原 正則

    2017年度 - 現在

     詳細

    固体高分子形水電解槽(PEWE)において、過電圧が小さく、触媒劣化が起き難い水電解反応用のアノード触媒の開発が重要となっている。本研究では、酸化イリジウムおよびその合金のナノ粒子を、導電性の高いナノカーボン材料の担体上に均一に分散担持した触媒の開発を行い、触媒の高活性化を目指す。また、合成した触媒を用いてPEWEセルの動作特性の評価を行う。

    成果:

    2022年度
    ホウ素および窒素を共ドープしたグラフェン担体上にIrO2を担持した触媒を用いて固体高分子形水電解槽中で触媒活性の評価を行った。IrO2/BNドープグラフェンは酸素発生反応(OER)に対して高活性かつ高耐久性を有することが示された。

  • 直接形燃料電池用触媒の開発

    原 正則

    2017年度 - 現在

     詳細

    水素キャリア分子(キノン類、グルコース等)を燃料に用いた直接形燃料電池のアノードに用いる新規電極触媒の開発を行う。水素キャリア分子の酸化反応に対して、高活性かつ選択性の高い触媒の開発には、触媒に用いるナノ粒子の元素だけでなく、触媒のサイズや表面構造、さらには担体の素材などの制御も重要となる。本研究では、水素キャリア分子に用いられる芳香族系有機分子に適した非金属の触媒の開発・評価を進める。

    成果:

    2022年度
    異種元素ドープグラフェンを用いて、直接型燃料電池の燃料に用いるキノン類の酸化特性を評価した。ホウ素のドープによりグラフェンの触媒活性が向上することが明らかとなった