電子情報分野
研究室名
レーザ科学研究室   
研究室タイトル
極限的な性能を持った超高速レーザーとそれを使った次世代計測技術の開発
研究室概略
数フェムト秒(10-15秒)で振動する光電場を精密に制御・計測する最先端の技術を駆使し、極限的に短いパルスを発生する超高速レーザーの開発に取り組んでいる。また、そのレーザーを光源として、新規の分光計測技術や、多光子顕微鏡開発、レーザートラッピングの研究を進めている。
主な研究テーマ
・極限的に短いパルスを発生するレーザー装置の開発
・2フェムト秒程度で振動する光電場振動を計測する技術の開発
・超短光パルスの特徴をうまく利用した分光計測技術の開発
・新規光源を使ったレーザートラッピングの研究
個別研究テーマ
  • 超短パルス1030nmファイバーレーザーを用いた共鳴光マニピュレーション

    工藤 哲弘, 藤 貴夫

    2022年度 - 2023年度

     詳細

    これまで連続光を用いた電子的共鳴光マニピュレーションおよび光トラップの研究(理論、実験)を行ってきた。これからは、超短パルスレーザーを用いた更に自由度の高い共鳴光マニピュレーションの研究を実施する。

    成果:

    2023年度
    超短パルスレーザーを用いた光トラップを行い、その捕捉効果が光吸収による個液界面における摩擦抵抗の向上によるものであることがわかった。

    2022年度
    超短パルスレーザーを用いた光トラップ用の光学系を構築した。初期データではあるが、励起による捕捉力増大効果が確認できた。

  • 中赤外ファイバーレーザーを用いた光熱トラップ

    工藤 哲弘, 藤 貴夫

    2020年度 - 現在

     詳細

    本研究では、レーザーにより局所的に加熱された水の温度勾配を利用して、微小物質の光トラップを行っています。水は、1.5と2、3マイクロメートル付近に大きな吸収係数を持ちますが、従来までの研究では、1.5マイクロメートルのレーザーが利用されてきました。本研究では、1.5マイクロメートルよりも格段に吸収係数が大きくなる2及び3マイクロメートルのレーザーを独自開発し実験を行っています。

    成果:

    2023年度
    Opto-thermal manipulation with 3 μm mid-infrared Er:ZBLAN fiber laser
    Roukuya Mamuti, Masaya Shimizu, Takao Fuji, and Tetsuhiro Kudo
    Optics Express 32 (7), 12160-12171 (2024)

    2022年度
    3μmのレーザーを用いた光熱トラップの実験を行った。3μm帯に水は最も大きな吸収ピークを持ち、その分子振動をレーザーで励起した実験である。レーザー開発から始めた。2021年度の2μmの成果よりも効率的な手法を示すことができた。

    2021年度
    2μmのレーザーを用いた光熱トラップの実験を行った。2μmのレーザーで水を直接加熱することが可能であり、従来よりも効率的な光熱トラップが可能となる。

  • 中赤外光源を用いた分子振動励起に基づく光マニピュレーション

    工藤 哲弘, 藤 貴夫, DARMAWAN Yoshua Albert

    2020年度 - 現在

     詳細

    本研究では、中赤外レーザーを用いた従来までにない新しい光マニピュレーションおよび光ピンセットの実験を進めております。分子振動共鳴を利用することで、赤外スペクトルに応じた分子種の選別を目指しています。最近では、シリカ微粒子を励振するレーザーを用いることで、その粒子を選別するデモンストレーションに成功している。

    成果:

    2023年度
    Mid-Infrared Optical Force Chromatography of Microspheres Containing Siloxane Bonds
    Yoshua Albert Darmawan, Takuma Goto, Taiki Yanagishima, Takao Fuji, and Tetsuhiro Kudo
    The Journal of Physical Chemistry Letters 14 7306-7312 (2023), selected as Front Cover

    2022年度
    分子構造ごとに光選別可能な、中赤外輻射力クロマトグラフィー技術を提案した。シロキサン結合由来の微粒子を用いた実験を行い、物質の吸光度に応じて、光選別できることを示した。

    2021年度
    シリカの分子振動を励起することで、混合微粒子溶液中からシリカのみを選択的に光輸送することに成功した。

    2020年度
    準備段階として、中赤外分子振動共鳴効果が得られる実験手法を考え、実験装置等を準備した。

  • 超短赤外パルス光源を用いた顕微イメージング装置の開発

    藤 貴夫

    2017年度 - 現在

     詳細

    従来の赤外光源では困難だったケミカルイメージングを実現する。豊富な化学情報がもたらすケミカルイメージングより、観察対象の成分、特性、構造などに関する知見を得られ、化学・材料・環境・生命科学・医療などの幅広い分野への応用が期待できる。

    成果:

    2023年度
    High-speed scanless entire bandwidth mid-infrared chemical imaging
    Yue Zhao, Shota Kusama, Yuji Furutani, Wei-Hong Huang, Chih-Wei Luo, Takao Fuji
    Nature Communications 14(1) 3929 (2023)

    2022年度
    High-speed full-field entire bandwidth mid-infrared chemical imaging
    Yue Zhao, Shota Kusama, Yuji Furutani, Wei-Hong Huang, Chih-Wei Luo, and Takao Fuji
    arXiv:2209.06372 [physics.optics]

  • 高出力フェムト秒固体レーザの開発

    藤 貴夫

    2017年度 - 現在

     詳細

    フッ化物ファイバをレーザ媒質としたフェムト秒パルスレーザ発振器や増幅器、また、さらに高ピーク出力のパルスを発生できる固体レーザ増幅器の開発[Opt. Express 26 29460 (2018), Opt. Express 27 24499 (2019), Opt. Express 28 29918 (2020), Opt. Express 30 7332 (2022)]を進めています。

    成果:

    2023年度
    Dispersion-managed ultrafast laser based on thulium-doped ZBLAN fibers
    Hiroki Kawase, Junya Takano, Takao Fuji
    The 12th Asia-Pacific laser symposium

    2022年度
    Millijoule 265 fs Tm:YAP regenerative amplifier for driving ultrabroad band collinear mid-infrared optical parametric amplifiers
    Seyed Ali Rezvani and Takao Fuji
    Optics Express 30 (5), 7332-7339 (2022)

    2020年度
    Highly coherent multi-octave polarization-maintained supercontinuum generation solely based on ZBLAN fibers
    Seyed Ali Rezvani, Kazuhiko Ogawa, and Takao Fuji
    Optics Express 28 (20), 29918-29926 (2020)

    2019年度
    Generation and characterization of mid-infrared supercontinuum in polarization maintained ZBLAN fibers
    S. A. Rezvani, Y. Nomura, K. Ogawa, and T. Fuji
    Optics Express 27 (17), 24499-24511 (2019)

  • 光電場振動波形計測法の研究

    藤 貴夫

    2017年度 - 現在

     詳細

    数フェムト秒で振動する光電場波形を直接計測する新しい手法を開発しました[Nat. Commun. 4 2820 (2013)]。従来のアト秒パルスを使った手法と比べてはるかに簡便であり、広い分野で応用できる可能性があります。

    成果:

    2023年度
    分子科学研究所の極端紫外光放射光施設から発生する極端紫外光の1次光から3次光までの電場波形をSPIDER法によって測定することを試みた。

    2022年度
    Spectral phase interferometry for direct electric-field reconstruction of synchrotron radiation
    Takao Fuji, Tatsuo Kaneyasu, Masaki Fujimoto, Yasuaki Okano, Elham Salehi, Masahito Hosaka, Yoshifumi Takashima, Atsushi Mano, Yasumasa Hikosaka, Shin-ichi Wada, and Masahiro Katoh
    Optica 10 302 (2023)

  • 極限的に短い光パルスを使った超高速分光

    藤 貴夫

    2017年度 - 現在

     詳細

    フィラメンテーション法で発生した7フェムト秒中赤外光パルスを利用して、高速な赤外スペクトル計測、フェムト秒ポンプ・プローブ分光の開発を進めています[J. Opt. 17 094004 (2015)]。

    成果:

    2023年度
    High-speed scanless entire bandwidth mid-infrared chemical imaging
    Yue Zhao, Shota Kusama, Yuji Furutani, Wei-Hong Huang, Chih-Wei Luo, Takao Fuji
    Nature Communications 14(1) 3929 (2023)

    2022年度
    サブサイクル中赤外光パルス光源の繰り返し周波数を10kHzから5kHzに変更することで、中赤外光パルスの強度が安定するようになった。この光源を利用して、これまでにない広帯域で高速な赤外ハイパースペクトルイメージングを行うことができた。

    2020年度
    Femtosecond time-evolution of mid-infrared spectral line shapes of Dirac fermions in topological insulators
    Tien-Tien Yeh, Chien-Ming Tu, Wen-Hao Lin, Cheng-Maw Cheng, Wen-Yen Tzeng, Chen-Yu Chang, Hideto Shirai, Takao Fuji, Raman Sankar, Fang-Cheng Chou, Marin M. Gospodinov, Takayoshi Kobayashi, and Chih-Wei Luo
    Scientific Reports 10, 9803 (2020)

  • 極限的に短い光パルスの発生手法の開発

    藤 貴夫

    2017年度 - 現在

     詳細

    フィラメンテーション法という独自の技術を使って、極限的に短い中赤外光パルスの発生に成功しました[Opt. Express 28 36527 (2020)]。その光パルスを科学や産業の広い分野で利用できるようにするため、発生技術を更に高める研究開発を行っています。

    成果:

    2023年度
    Sub-cycle mid-infrared pulse: generation and applications
    Takao Fuji
    Frontiers of ultrafast science: From fundamentals to applications
    Invited talk

    2022年度
    繰り返し周波数を10kHzから5kHzに変更することで、中赤外光パルスが安定するようになった。この光源を利用して、これまでにない高速な赤外ハイパースペクトルイメージングを行うことができた。

    2020年度
    Generation of sub-half-cycle 10 µm pulses through filamentation at kilohertz repetition rates
    Wei-Hong Huang, Yue Zhao, Shota Kusama, Fumitoshi Kumaki, Chih-Wei Luo, and Takao Fuji
    Optics Express 28 (24), 36527-36543 (2020)

  • 多光子顕微鏡のためのファイバーレーザーの開発

    藤 貴夫

    2017年度 - 現在

     詳細

    多光子顕微鏡に適した新しいファイバーレーザーを開発する。

    成果:

    2023年度
    Chirped pulse amplification based on praseodymium-doped fluoride fibers
    Koki Yamaizumi, Fumihiro Hondo, and Takao Fuji
    Optics Express 31 (10), 16127-16132 (2023)

    2022年度
    In vivo three- and four-photon fluorescence microscopy using a 1.8 µm femtosecond fiber laser system
    Hideji Murakoshi, Hiromi H. Ueda, Ryuichiro Goto, Kosuke Hamada, Yutaro Nagasawa, and Takao Fuji
    Biomedical Optics Express 14 (1), 326-334 (2023)

    2020年度
    Short-wavelength, ultrafast thulium-doped fiber laser system for three-photon microscopy
    Yutaka Nomura, Hideji Murakosh, and Takao Fuji
    OSA Continuum 3 (6), 1428-1435 (2020)

  • 中赤外光ピンセット

    工藤 哲弘, DARMAWAN Yoshua Albert

    2024年度 - 現在

     詳細

    分子振動共鳴効果を利用した中赤外光ピンセットの実験を遂行する。赤外スペクトルの差異を利用し、選択的に物質を光捕捉、および操作することが目的である。

  • 中赤外グラフェンプラズモン局所電場によるナノ微粒子トラップ

    工藤 哲弘

    2024年度 - 現在

     詳細

    中赤外領域における局在電場を利用しナノ粒子安定的に光捕捉することが目的である。

  • 中赤外レーザーの開発

    河瀬 広樹

    2017年度 - 現在

     詳細

    様々な分野(医療、産業、及び学術分野)への応用が期待されている連続波(CW)、フェムト秒中赤外レーザーの研究開発を行う。また、中赤外フェムト秒レーザーの高強度化を目的とした増幅器の開発も行う。

    成果:

    2023年度
    マッハ・ツェンダー干渉計において相互相関計測法を用いたフッ化物ファイバであるZBLANファイバの群速度分散の測定に成功した。

    2023年度
    Tm添加フッ化物ファイバ1(Tm:ZBLAN)を用いたモード同期レーザーにおける共振器内分散を制御した際に、ソリトン、ストレッチパルス、及び散逸ソリトンモード同期動作の観測に成功した。

    2022年度
    Dy添加フッ化物ファイバ励起用の高出力な波長1.7 µmラマンファイバーレーザーの開発に成功した。

    2022年度
    高強度なTmレーザーを実現するべく、本研究室では、mJ級のTmフェムト秒レーザーシステムの開発を行ってきた。本年度は、レーザーシステムにおけるファイバ増幅器を改良し、ファイバ増幅においてこれまでの2倍の高強度化を実現した。