機械システム分野
研究室名
マイクロメカトロニクス研究室   
研究室タイトル
機能性構造の加工やマイクロ機械に関する研究
研究室概略
最近の機械に求められる性能は、快適(情報)、 安全、環境性能に関連したものが少なくない。これらの実現には、部品表面に機能性の微細構造を加えたり、センサによる各種の状態検出が重要となる。車を例にすれば、搭乗者や室内環境の測定、車体が受ける慣性力測定などである。構造と材料両方の工夫を活用できるMEMS 技術によって、新しい付加価値創出に取り組む。
主な研究テーマ
・3次元フォトリソグラフィ
・マイクロプラズマ応用
・振動型センサ
・波長選択赤外光源など光MEMSデバイス
個別研究テーマ
  • フォトリソグラフィによる立体加工技術

    佐々木 実

    2017年度 - 現在

     詳細

    IC製作で実績のある従来のフォトリソグラフィは、サンプル形状に制限が入りやすい。スピンコーティングによるレジスト成膜は平面でないと有効でないからである。立体化してしまったサンプルに所望のパターンを用意するのは難しい。この制限を超えるために、レジストのスプレー成膜や、レジスト膜をシートとして用意する技術を手がけている。機械部品への表面機能付与や立体配線などの応用がある。また、切削バイトすくい面に幅2µmの微細溝を形成して摩擦を減らす応用例では、加工エネルギーを3割以上減らす効果が得られている。

    成果:

    2022年度
    レジスト膜のシートを応用した研究は、金型へのマイクロテキスチャを進めた他、Liイオン電池想定で幅1.5µmの微細構造を作り込むのにも有効である発展が得られた。

  • マイクロセンサとマイクロアクチュエータ

    佐々木 実

    2017年度 - 現在

     詳細

    微細加工を応用して新しい、マイクロセンサやマイクロアクチュエータを創る。例えば、~10Vの低電圧で動作する静電駆動型マイクロミラーが実現できる。原理的工夫は、マイクロミラーを数100nm厚の薄い紐状ねじれバネで支えることでバネ定数を小さくしたことである。但し、静電引力がミラーの上下変位ではなく回転運動を生じるように、紐をピンと張って上下方向には硬く、回転には柔らかさを保つようにした。アモルファスから結晶化したポリシリコン膜を利用し、大きな張力と温度安定性を実現した。また、静電アクチュエータの性質を利用して、高電圧バッテリの出力を測定する絶縁型電圧センサ、人の皮膚の性質を利用したウェアラブル型の呼吸センサの研究を手掛けている。

    成果:

    2022年度
    レジスト膜のシートを応用した研究とも関係するが、MEMS静電アクチュエータの櫛歯構造を電極ギャップ1.5µmにて行うなど微細パターンを転写するのにも有効である発展が得られた。上記ギャップは、通常のマスク露光では転写を安定してえることが難しいサイズであり、パッシェンカーブからは放電を避けて電界を高くするのに有利な寸法である。

  • MEMS応用プラズマ技術

    佐々木 実

    2017年度 - 現在

     詳細

     大気圧プラズマの特徴と、MEMS微細加工の技術を生かし、微小なマイクロプラズマ光源を実現する。例えば、5Wで点灯する誘導結合型プラズマ(ICP)の真空紫外光源、細胞のような小さなサンプルをトラップするインターフェース機能付きプラズマ源を実現した。真空封止したガスチャンバにて、電力を加えるだけで大気圧プラズマを点灯できることも確認した。
     また、誘導結合型の大気圧プラズマに浮遊電極を初めて導入することで、点灯し易くなり、省エネで高密度なプラズマ源の実現につながった。これはサイズの大きなプラズマ源としても有効である。

    成果:

    2022年度
    プラズマ処理水が、花粉の発芽を促進する効果が得られた。花粉を扱う実験において、孤立した花粉を500µm間隔で配列する操作に有効な、MEMSノズル素子と合わせて研究した。これは名古屋大学の田中宏昌教授と進めた。