物質工学分野
研究室名
触媒有機化学研究室   
研究室タイトル
金属触媒の精密設計に基づく実践的な分子変換反応の開発と応用研究
研究室概略
有機金属化学を基盤とし、均ー系分子触媒から担持型の固体触媒に至るまで幅広く金属触媒を設計・合成し、これらを用いて現代社会に求められている地球環境に調和した省資源 ・省エネルギー型の精密な物質合成プロセスの創出を目指している。
主な研究テーマ
・担持型金属 クラスターの創製
・可溶性金属サブナノクラスターの科学
・実践的な触媒反応の開発
個別研究テーマ
  • 遷移金属とヒドロシランによる新規な官能基変換反応の開発

    本山 幸弘

    2013年度 - 現在

     詳細

    ヒドロシランを還元剤として用い,多重結合を有する官能基の効率的な変換反応を促進しうる遷移金属触媒の開発を行っている.

    成果:

    2024年度
    既に我々は市販のPd/CにCu(acac)2やCu(OAc)2存在下,トルエン中で1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを添加すると,エステルの部分還元体であるアルキルシリルアセタールが選択的に生成すること,得られた鎖状のアルキルシリルアセタールにルイス酸存在下でアリル化剤を加えると求核置換反応が進行することを報告している.今回,環状エステルであるラクトンを用いても同様に部分還元後の求核置換反応が進行することを見出した.特に中•大員環ラクトンにも適応可能であり,開環を伴うことなく対応する環状アリル化体が高収率で得られた.

    2023年度
    これまでに我々は市販のPd/CにCu(acac)2やCu(OAc)2存在下,トルエン中で1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを添加すると,エステルの部分還元体であるアルキルシリルアセタールが選択的に生成すること,得られたアルキルシリルアセタールにルイス酸を低温で加えるとエステルの脱酸素型還元体であるエーテルが高選択的に得られることを報告している.今回,ジメトキシエタン溶媒中でCu(OTf)2を用いると穏和な条件下でエーテルが一段階で高選択的に得られることを見出した.

    2022年度
    これまでに我々は市販のPd/CにCu(acac)2やCu(OAc)2を添加するとエステルの部分還元体であるアルキルシリルアセタールが選択的に生成することを報告している.今回,Pd/Cの代わりに0価のPt錯体を用いても同様にアルキルシリルアセタールが得られること,また銅塩の代わりにAg塩も適用可能なことを見出した.

    2019年度
    活性炭存在下,PdCl2と1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを用いるとO–t-Bu部のC–O結合の開裂反応が容易に進行することを見出した.この手法を用いることで,t-Bu基を有するエステル,エーテル,Boc基の脱保護反応を穏和な条件下で達成できる.添加剤である活性炭は触媒活性の維持だけでなく,反応後のPd種の除去にも重要であることを明らかにした.

  • ナノからサブナノサイズの金属クラスターの創製と触媒反応開発

    本山 幸弘

    2013年度 - 現在

     詳細

    新規な金属クラスターの合成法を開発し,これらを炭素ナノ繊維や活性炭,金属酸化物上に担持した不均一系触媒の創成や可溶性金属触媒へと展開し,これらを用いた効率的な水素化反応への応用研究を行っている.

    成果:

    2024年度
    既に我々はRu3(CO)12の熱分解で合成した炭素ナノ繊維担持Ruクラスターが芳香環の水素化に高い活性ならびに耐久性を示すことを報告しているが,活性種の発生には厳しい反応条件が必要であった.今回,2価のアセテート配位子を有するRu錯体を用いると温和な条件下で活性種が発生すること,ZtO2を担体に用いるとエポキシ基を損なうことなく環水素化が進行することを見出した.

    2023年度
    既に我々はZrO2上に固定化したPd(OAc)2が穏和な条件下でクラスター化すること,カルボニル基は還元しないがイミノ基は常圧の水素で還元できる事を報告している.今回,フェノキシイミン配位子を有するPd錯体から得られるPdクラスターの方がアルケンの水素化活性は向上するがニトロ基はほとんど反応しないこと,金属酸化物にTiO2を用いると水素化活性が向上することを見出した.

    2022年度
    活性炭存在下でKarstedt’s触媒やPt(dba)2錯体を用いると芳香族化合物の環水素化が穏和な条件下で進行することを見出した.本触媒系は多様な基質に適用可能であり,金属残査を含まない生成物を収率良く得ることができる.添加剤である活性炭は触媒活性の維持だけでなく,反応後のPt種の除去にも重要であること,同様の活性維持効果はビニルシロキサン類でも見られることを明らかにした.

  • 三級炭素型保護基の機能解明とその嵩高さを鍵とする新規な物質合成手法の開発

    土屋 直輝

    2024年度 - 現在

     詳細

    本研究では,「究極の嵩高さ」である三級炭素型保護基に着目し,「四級炭素に対する置換反応(保護)」と「除去困難なt-Bu基の脱保護反応」を融合させ,三級炭素型保護基の選択的保護と脱保護手法の確立や多官能性対称分子に対する非対称化手法を確立することで,より実践的な物質合成プロセスに応用展開することが目的である.

    成果:

    2024年度
    アルコールおよびフェノール誘導体を基質とした立体的に嵩高い第三級α-ハロアミドに対するハロゲン部位での置換反応が,既に報告されている手法と比べてより効率的に進行することが明らかとなり,この結果はα-ハロアミドが水酸基のよい三級炭素型保護基として利用できることを示す結果である.また,三級炭素であるtert-ブチル基で保護されたエステルおよびエーテル化合物の脱保護反応についても金属触媒とヒドロシランを組合わせた反応により,良好な結果が得られている.これらの結果を基に,現在論文執筆中である.