■廃止組織■
研究室名
情報通信研究室   
研究室スタッフ
松井 一 (准教授) 尾白 典文 (ポストドクトラル研究員)
研究室タイトル
情報工学・コンピュータサイエンスについて基礎から応用まで一貫して研究
研究室概略
大量の情報を正確かつ高速に通信し記録する技術、また複雑な論理に対しコンピュータによって効率よく推論する技術は、近年目覚ましい発展を遂げている。本研究室ではこれらの分野における未解決問題に日々取り組んでいる。また基礎理論の研究に加え、これらの理論の応用面についても研究を行っている。
主な研究テーマ
・誤り訂正符号の高性能化の研究
・多値論理多項式の積の高速化とその応用
・量子誤り訂正符号の開発および構成・探索
・コンピュータサイエンスにおけるさまざまな未解決問題に挑戦
個別研究テーマ
  • 様々な誤り訂正符号の構成と探索

    松井 一(転出・退職)

    2017年度 - 現在

     詳細

    誤り訂正符号とは,デジタル通信中に起こる誤りを自動で訂正するものであり,信頼性の高い訂正能力を持つビット列の構成や探索が広く研究されている.本研究室では準巡回符号と呼ばれる誤り訂正符号に注目している.準巡回符号は現在最も高性能な誤り訂正符号とされるLDPC(low-density parity-check)符号を構成できる有用なクラスである.本研究室における準巡回符号に対するアプローチは大きく分けて2つからなる.1つ目は準巡回符号を素因子分解することによる中国剰余定理の応用である.この方法によって,準巡回符号の符号長がある程度長くても効率よく構成することができ,また誤り訂正能力の高い準巡回符号を高速に探索することができる.2つ目は反転不変符号と呼ばれる誤り訂正符号に対する準巡回符号の性質を用いた構成と探索である.反転不変符号は順序を反転させた符号語もまた符号語であるという特徴を持ち,DNAを用いた記憶媒体用の符号としての応用がある.本研究によって準巡回符号の特性を利用して反転不変符号かどうかを素早く判定することが可能となり,計算機探索によって誤り訂正能力の高い反転不変符号を多数発見している.

    成果:

    2022年度
    ガウスおよびアイゼンスタイン整数剰余環上の誤り訂正符号に対し,中国剰余定理を応用し,素元分解によって効率的に生成行列を構成する手法を論文発表した.

  • 多値論理回路・関数・多項式と離散フーリエ変換

    松井 一(転出・退職)

    2017年度 - 現在

     詳細

    多値論理関数とは,入出力が有限体である多変数関数であり,スイッチング回路の構成に応用がある.多値論理多項式とは,有限体係数の多変数多項式であり,多値論理関数は多値論理多項式と全体として等しいという事実がある.誤り訂正符号と多値論理多項式とは互いに双対の関係にあるため,誤り訂正符号の研究成果を多値論理多項式に応用できる.本研究では,「畳込み定理」と呼ばれる,多値論理関数と多値論理多項式の間の離散フーリエ変換を介して成り立つ関係を,有限体の半群と呼ばれる部分集合に対して一般化した.ここで扱う多値論理関数は,有限体内の半群の直積から有限体への関数であり,また多値論理多項式はこれらを多項式に変換したものである.次に,この定理を多値論理多項式どうしの積の高速化に応用し,概算として従来は変数の個数の2乗オーダーであったが,高速化により1乗掛ける対数オーダーにまで計算量を削減することができた.

    成果:

    2022年度
    論理多項式に対し学習のゼータ関数を応用し,ベイズ推定における漸近挙動と実対数閾値の計算を行った.

  • 複素ニューラルネットワークに対する情報幾何学の応用

    松井 一(転出・退職)

    2017年度 - 現在

     詳細

    複素ニューラルネットワーク(複素NN)は通常のNN(実NN)の入力,出力,重み等を全て複素数にしたニューラルネットワークモデルである.複素NNには電磁場や光波等に対する様々な活用例が知られている.複素NNの学習法である最急降下法は学習の停滞が起きる場合がある.実NNの最急降下法の学習の停滞においては,情報幾何学や微分幾何学を用いた最適化手法である自然勾配法が提案されている.そこで,複素NNの学習の停滞現象の解決法として自然勾配法の複素NNへの一般化を提案した.また,複素数の特性として平面での線対称や回転の変換の容易さが挙げられる.その特性に着目し,複素共役不変な複素データや回転不変な複素データに対し学習を行った場合に,複素NNの出力が共役や回転による不変性を持つことを示し,認識精度向上やデータ削減を行うことができることを示した.

    成果:

    2022年度
    実ニューラルネットワークを準巡回符号の性能評価に用いる手法を開発し学会発表を行った.