機械システム分野
研究室名
固体力学研究室   
研究室タイトル
~軽くて強い機械構造・材料~この“矛盾”を克服する計算力学シミュレーションと最適設計法に開する研究
研究室概略
軽いものは弱く、強いものは重い。軽いことと強いことという相反する特性を両立させてこそ競争力に優れた製品を生み出すことができる。ナノからマクロまでの計算力学シミュレー ションを駆使した構造最適化や強度評価を通じてこの "矛盾" を克服し、高付加価値な機械 材料/構造設計を支援するための方法論の確立とその実設計への応用を目指している。
主な研究テーマ
・構造体の形状・形態最適化のための力学的逆問題の解法とその応用
・複合材料から成る構造体のマルチスケール最適設計に関する研究
・機械学習分子動力学シミュレーションによる材料強度の原子論的研究
・ペリダイナミクス粒子法による構造体の衝撃破壊シミュレーションの開発
個別研究テーマ
  • 均質化法を利用したマルチスケール構造最適設計に関する研究

    下田 昌利, AL ALI Musaddiq(転出・退職)

    2018年度 - 現在

     詳細

    ポーラスやセル構造のような周期性ミクロ構造の形状・形態を最適化することにより,マクロ構造体の力学特性を所望の特性にコントロールするための構造最適化手法を開発する.2次元と3次元の種々のミクロ構造を想定し,均質化法を用いてマクロ構造と接続する.

    成果:

    2022年度
    マルチスケールトポロジー最適化により、軽量で熱伝導性の多孔質構造の設計パフォーマンスを最大限に引き出すことに成功した。 3 つのトポロジー最適化手法を比較することで、マクロスケールとミクロスケールに大きな影響を与えることが観察され、 多様な微細構造の導入により、軽量化と空間レイアウトが向上し、熱伝導経路が最適化された。 また、所定の異方性熱伝導率を有する微細構造を実現し、 そのメッシュの依存性も示した。更に、高詳細な 3D 最適化設計の実装に成功し、試作と試験を通じて検証した。

    2022年度
    熱伝導率と構造剛性に関する同時マルチスケールおよびマルチフィジックス トポロジー最適化手法を開発し、熱と機械的コンプライアンスのトレードオフを示した。

    2022年度
    ミクロ構造として2次元ポーラス構造を用い、積層シェルから成るマクロ構造の変位コントオールを目的した各層と各サブ領域中の全マイクロポアの形状最適化のための手法を開発した。

    2022年度
    ミクロ構造として2次元ポーラス構造を用い、熱負荷を受ける線形弾性体の熱応力最小化を目的したマイクロポアの形状最適化手法を開発した。

    2022年度
    ミクロ構造として2次元ポーラス構造を用い、積層シェルから成るマクロ構造の固有振動数最大化を目的した各層と各サブ領域中の全マイクロポア形状を最適化する最適化手法を開発した。

    2022年度
    ミクロ構造としてマイクロシェル構造を用い、マクロ構造の変位コントロールを目的したマイクロシェルの板厚最適化手法を開発した。

    2022年度
    ミクロ構造として2次元と3次元のポーラス構造を用い、マクロ構造の固有振動数最大化を目的したマイクロポア形状とマクロ構造トポロジーの同時最適化手法を開発した。

    2022年度
    ミクロ構造としてマイクロラチス構造を用い、マクロ構造の変位コントロールを目的したマイクロラチスの寸法と形状の同時最適化手法を開発した。

  • ソリッド体の形状デザインのための力学的逆問題に関する研究

    下田 昌利

    2017年度 - 現在

     詳細

    3次元ソリッド体に表面力や物体力が作用する場合の表面形状を力学的に最適にすることを目的とする逆問題の解法を研究している.負荷部分の形状や複数の材料から構成される複合ソリッド体の界面の形状の最適化についても研究を進めている.

    成果:

    2022年度
    切り紙構造の力学特性のコントロールを目的にした最適化手法を開発中である。その一環として、切り紙構造の展張に伴う不安定現象を非線形FE解析で再現した。

    2022年度
    自己接触スリット部を多数有する固体を想定し、目標とする非線形変位-荷重特性を得ることを目的に、接触スリット部の形状を最適化する手法を開発した。

    2022年度
    固体からなる設計対象の補剛のため、固体の表面に無からリブを創生する手法を、トポロジーと形状最適化手法を組み合わせ開発した。

  • シェル構造体の形状・トポロジー最適化理論とその構造設計への応用

    下田 昌利

    2017年度 - 現在

     詳細

    シェル構造はペットボトルや携帯電話から自動車,航空機,建築構造物等に幅広く用いられている構造体である.軽量化や高機能化,省資源の観点から限られた材料で要求される構造特性を満たすシェル形状を効率的に設計することが要求されている.特に,形状制約が少ない場合には自由曲面形状が求められる.これを計算機を用いて自動的に求める形状最適化理論を構築し,剛性や強度,座屈,振動,音響等の設計問題へ応用する研究を進めている.また,本研究を衝撃荷重を受ける構造設計問題へ応用し,エネルギー吸収デバイスとしての研究も進めている.

    成果:

    2022年度
    積層シェル構造体の固有振設計問題を対象に、形状とトポロジーの同時最適化手法を開発した。固有振動に関するトポロジー設計で問題となる偽りモードを除きながら、シェル全体の曲率分布と各層のトポロジーを最適化することを可能にした。

  • 人体・感性系を考慮した構造最適設計に関する研究

    下田 昌利

    2017年度 - 現在

     詳細

    消費者社会においては,製品開発において機能やコストに加え,デザイン性の考慮が益々重要になってきている.デザインが機能を上回る付加価値となっている場合も少なくない.本研究ではこれまでの構造最適化の評価関数に感性を加え,デザインと構造特性の両者を考慮した最適化手法の検討を行っている.人体への負荷や触覚を評価関数としたマン-マシン系での構造設計に関する研究を進めている。

    成果:

    2022年度
    我々は、シェル要素から構成される3次元メッシュの品質を評価するためのGCN(Graph Convolutional network)ベースの機械学習手法を開発しました。

  • 複合材料の配向角・材料配置の最適設計法に関する研究

    下田 昌利

    2017年度 - 現在

     詳細

    複合材料の一つである直交異方性材料に注目し,その配向角を設計変数に,板・シェル構造の力学特性の向上を図るための最適設計手法の開発とその実構造への応用を行っている.配向角は場所ごとに自由にその向きを変えることができるものとし,その滑らかな最適配向角分布を求めている.形状最適化との組み合わせににより,より高性能な構造設計が可能となる.

    成果:

    2022年度
    繊維の曲線配向のためのオイラー型とラグランジュ型の最適化手法を開発した。我々はオイラー型手法を周波数応答問題へ適用し、その効果を数値的、実験的に確認した。ラグランジュ型手法は長繊維だけでなく、短繊維へもできることが特徴である。

  • 第一原理計算によるナノヘテロ表面上における高分子金属表面相互作用の解明

    椎原 良典

    2017年度 - 現在

     詳細

    HPTなどの強加工により大量の格子欠陥が導入された鋼材表面(ナノヘテロ表面)においては,境界潤滑下における摩擦係数が無加工材のそれと異なることが知られている.一方で,この現象が生じるその機構については未だ明らかでない.本研究では,電子論に基づく第一原理計算によりナノヘテロ表面と潤滑油の相互作用を明らかとし,摩擦係数変化機構の解明を目指す.

    成果:

    2022年度
    欠陥を含む鉄表面と吸着分子複数の相互作用をシミュレーションし,吸着分子の振る舞いを明らかにした.

  • 並列ペリダイナミクス粒子法の開発

    椎原 良典

    2017年度 - 現在

     詳細

    ペリダイナミクス粒子法は粒子ベースで離散化する連続体シミュレーション法であるが,大規模計算に必須な並列アルゴリズムやその実装については議論が尽くされていない.本研究では,ハウスコードとして開発したペリダイナミクスコードを並列化し,超並列計算機上での並列効率の検証およびそのアルゴリズムの開発・改良を目的とする.

    成果:

    2022年度
    並列ペリダイナミクスコードの実証実験を実施した.

  • ヒト肌のしわ形成シミュレーション

    椎原 良典

    2017年度 - 現在

     詳細

    美容科学の観点から,人の肌において生じるしわと肌の材料特性の関係は皮膚科学,美容科学の観点から重要である.本研究ではしわを肌表面の非線形座屈現象と捉え,有限要素法による非線形座屈解析によりしわ形成をシミュレートする.肌の有限要素モデル化,肌の材料特性に関するパラメトリックスタディを通じて,材料特性としわ形成の相関を明らかとする.

    成果:

    2022年度
    ある非線形材料特性に着目して計算を実施し,しわとの関係を明らかにした.

  • 第一原理局所応力計算法の開発

    椎原 良典

    2017年度 - 現在

     詳細

    材料のナノレベルでの力学状態は材料強度発現の根源的機構を記述するのみにとどまらず,化学的特性,電磁気学的特性の面からも重要である.本研究では材料中のナノレベル応力を電子論に基づく第一原理計算から評価できる第一原理局所応力法を開発し,その妥当性,適用可能性を明らかとする.

    成果:

    2022年度
    機械学習ポテンシャルでの原子応力計算手法を構築し,第一原理計算を定性的に再現する精度で計算可能であることを鉄表面・アルミ表面上で確認した.